米財務省は2015年4月1日にUSASpending.govをバージョンアップしたと発表しました。USAspending.govとは、2006年に成立した連邦政府資金に関するアカウンタビリティ・透明性確保法(The Federal Funding Accountability and Transparency Act)に基づいて、2008年に開設されたWebサイトであり、連邦政府の財務データや契約データを公開しています。米国政府はOpen Government National Action Planの第2版に対する強化策の中で、USASpending.govに対して、インタラクティブマップの追加、検索機能の強化、APIの提供を明記しており、今回のバージョンアップはその一環として実行されたものです。
財務省によれば、ナビゲーションの改善、平易な用語の使用、インタラクティブマップの提供、検索機能の強化などが行われ、市民にとってUSASpending.govは格段に使いやすくなったとのことです。
しかし、この「強化」に対しては、早くもビジネス界から批判が出ています。FierceGovernmentITによれば、今回のバージョンアップによって、連邦政府の調達データシステムが定めた製品・サービスコードでの検索や、北米産業分類システムによる分類コードでの検索ができなくなりました。さらに、親企業検索、キーワード検索、日付範囲によるフィルタリングなどが削除され、検索で入手できるデータ項目数が200以上から12へと大幅に減らされました。
USASpending.govは既にビジネスで広く使われており、今回の「強化」はこうした企業に大きな影響を与えています。例えば、政府の入札情報をタイムリーに提供するGovTribeは、今回の「強化」について、政府の透明性を低下させるのみならず、データを活用したビジネスの継続を困難にするものだと批判しています。
USASpending.govは、2014年4月10日に上院、4月28日に下院をそれぞれ全会一致で通過し、5月9日にオバマ大統領が署名し成立したDATA法とも深い関係があります。DATA法とは連邦政府資金に関するアカウンタビリティ・透明性確保法を改正した法案であり、公開するデータをより具体的に特定するとともに、公開する内容をより詳細にすることを目的としたものです。DATA法によって、連邦政府ならびに連邦政府機関は財務データをUSAspending.govで標準形式で公開することが義務付けられます。
今回の「強化」がDATA法における標準形式とどのような関係があるのかは現時点では定かではありません。もし市民にとって使いやすいようにユーザーフレンドリーにするという理由だけで、標準形式におけるデータ項目が削減されたりすれば、DATA法は政府の透明性にも、そしてデータビジネスにも逆効果となる恐れもあります。
連邦政府が市民にわかりやすいようにUSASpending.govで財務データを公開をする意義について、否定するつもりは全くありません。しかし政府のもう一つ重要な責務として、できるだけ詳細なロウデータをタイムリーに提供する必要があることも忘れてはなりません。
参考:USASpending.gov updated, functionality drastically diminished say businesses
(東 富彦)
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